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2006/08/30

局麻シャワー

Spinal1

麻酔にも色々な方法がありますが、
下半身だけの麻酔で済み、かつ短時間で終わる手術のときには
脊髄くも膜下麻酔(spinal anesthesia)という麻酔方法が使われる事があります。
これは腰に針を刺して、背中の神経が通っている所に麻酔薬を注入する方法です。
患者さんが起きた状態で下半身だけ麻酔を効かせられるので、術後の退室も割と早いのが特徴です。
今日はそのお話……。

脊麻(と略す)では、最初腰に針を刺す際に患者さんが痛くないよう局所麻酔をします。
(局所麻酔が効いてから、本格的に麻酔用の長い針↓を使うわけです)

Sprotte

この局麻は皮下の浅い所から、ちょっと深いところまで徐々に効かせる必要が
あるんですが、皮下の麻酔ってちょっと力が要るんです。
皮膚の下に盛り上げるように麻酔薬を入れる必要があるためです。

Spinal2

さて。その日の脊麻の手術で、俺は局所麻酔薬を入れるため注射をチクッと背中に刺しました。
もちろん患者さんには『じゃあちょっとチクッとしますよー』と声掛けを忘れません。
そこで皮膚に局所麻酔を効かせ、表面の麻酔は何とか成功。
次に麻酔用のながーい針を腰に刺します。

ぷすっ。

……ところがこれがなかなか曲者で、針が上手くいい場所に行かない。
『痛くないですかー? しびれとか無いですかー?』
とか聞きながら、自分も落ち着かせつつ探る。

(手ごたえはそこそこいい所にあるんだけどなぁ…)

後は手ごたえが頼りなのだが、靭帯を刺すググッという感覚の後で
どうやっても奥の方でコツ……と骨に当たる感触があり針が止まってしまうのだ。

後ろから上の先生が小さい声で声をかけてくる。

「どう? 行けそう?」(小声)

『行けると思うんですけど……、ちょっと向きを変えてみます』(小声)

「うむ」(小声)

そこで一度針を皮膚の所まで戻して来て、再度刺し直すと患者さんから
「せんせ、ちょっと針刺している所が痛いです」との声。
局所麻酔が十分に効いていない所に針が行ったせいだろう。

『はーい、わかりました。それじゃあ、痛み止めをもう一度足しておきますね』
と、俺は落ち着いて返す。

しかし、ここで事件は起きる。

局麻が入ったシリンジ(注射器の事をこう呼ぶのだ)を再度取り出して
皮膚に当て、ちょっと力を入れて後ろの押し子を押した瞬間。


シュパァァァァアアァァアア!! 


「!?」


手術室に響き渡る、気持ち良いほど威勢のいい音。

そして不意に曇る視界。

一瞬の『!?』の後自分の手元を見ると、

Spinal3

何と針の根元からシリンジが離脱していたのであった。


そして俺はと言うと……

Spinal4






……んと、とりあえずどうしよ。






ポン。


肩に置かれる手。
見上げると、上の先生が暖かい目で微笑みながら一言。


「代わるか」


『はい……。』


結局、麻酔薬は指導医の先生の手によってスムーズに入れられたのであった。


その後ずぶ濡れになった俺は、とりあえず眼鏡をふきふきした後

医療者の鉄則その①……患者に不安感を与えてはならぬ、の原則にのっとり

「大丈夫。無事に入りましたからね!」

と患者さんに笑顔でお答えしたのでありました。



今日の教訓:皮膚局麻をする時には、針の根元を押さえておこう。



Spinal5


いやぁ……研修医って、本っ当に辛いものですね。
それではまたお会いしましょうー。

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コメント

(  ゚,_ゝ゚)つhttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/4c/5b5414ddeb7123bce28da87435a9cdec.jpg

投稿: のき | 2006/09/03 09:32

ま、、まちがえた( ;´_ゝ`)
http://kasamatusan.sakura.ne.jp/cgi-bin2/src/ichi51297.jpg

投稿: のき | 2006/09/05 19:51

夜のお注射ならもっと頑張れると思うのに……。

投稿: ruteth | 2006/09/12 23:09

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