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2010年3月 3日 (水)

頚静脈圧(JVP: Jugular venous pressure)

頚静脈拍動の観察は大事な身体所見と知りつつも、循環器で研修を終えてしまった後は
ほとんど診る機会が無くなってしまったため、忘れがちなのでここに記録しておく。

~・~・~・~

■ 頚静脈の診察

頚静脈の診察は、内頸静脈の拍動を観察し、頚静脈圧、
ひいては循環血液量を評価する目的で行われる。
内頸静脈は下図の通り、胸鎖乳突筋の内背側にあるため観察しづらいが、
体位を変換させながら注意深く観察。

Naikei

■ 診察手順

① 患者を仰臥位とし、胸鎖乳突筋の緊張を解くため枕を挟む
② ベッドの角度を約30度上げ、首を軽く反対側へ反らせる。
③ 頚静脈に接線方向の光を当て、外頸静脈を同定し、そこから内頸静脈拍動を見つける。
   (胸鎖乳突筋と鎖骨への付着部位を目印に探すと良い)
④ 適切に評価できる角度(後述)になるまで、角度を上げ下げし、右内頸静脈の最高点を特定する。
⑤ この高さから、胸骨角までの垂直方向への距離を計測する。

Koyoukotukaku


臨床実習ではベッド角度は30~60度と習ったが、一番観察しやすい角度であれば
何度でも構わない。極端に言えば、脱水の患者であればベッドをフラット(0度)にしても
良いし、静脈圧が非常に高まっている場合は、90度でも観察出来る場合もある。

Jvp

(↑とは言え上記は理論上の事であり、ベッドサイドでは恐らく体位によって値が
上下するだろう。また人間の静脈圧基準軸は胸骨角よりも後方9~10cmにあり、
 実際の測定値は、この簡便な測定法よりも数cmH2O高くなる。)

■ 基準値

胸骨角から3cm以上(右房からは3+5=8cm以上)が、静脈圧上昇あるいは異常となる。
中心静脈圧の基準値は5~10cmH2Oであり、実際の静脈基準点からの測定値とは
若干のズレがあるが、カテーテル法との誤差は4 cmH2O以内に収まっている。

また鎖骨上縁は右房からおよそ13~15cmあるため、坐位で頚静脈怒脹が認められれば
CVPは13cmH2O以上あると、推定出来る。内頸静脈拍動が診にくい場合には、
外頸静脈の怒脹を診ても良い。(両者の測定値は変わらない)

ちなみに12歳以下では静脈拍動の観察が困難であるため、
この手技を用いた心血管系の評価は有用でない。

■ 診断精度

胸骨角からの垂直距離が3cm以上であった場合、2つの報告がある。各々カテーテル法で
CVP 8cmH2O以上…… 感度42-92%, 特異度 93-96%, 陽性LR 9.0
CVP 12cmH2O以上…… 感度78-95%, 特異度 89-93%, 陽性LR 10.4

■ 臨床的意義

○ 腹水や浮腫のある患者 ⇒ 心不全 or not?の鑑別
○ 術前に静脈圧上昇の所見があれば、術後に肺水腫(LR = 11.3)や
   心筋梗塞(LR = 9.4)を高い確率で引き起こす。

JVPの上昇する疾患としては、うっ血性の右心不全、収縮性心膜炎(感度 98%)、
心タンポナーデ(感度100%)、三尖弁狭窄症、上大静脈の閉塞などがある。

■ その他

ちなみに基本事項であるが、1 mmHg = 1.36 cmH2O。
つまり中心静脈圧 5~10 cmH2O = 4~8 mmHg

○ 中心静脈圧は大静脈あるいは、右心房圧の平均値であり、
   三尖弁狭窄が無い場合には右室の拡張終期圧に等しい。

○ これに関する身体所見として腹部頚静脈テスト (abdominojugular test)がある。

患者の腹部中央を10秒間強く圧迫して頚静脈を診る。
正常人はCVPの上昇無し、もしくは1~2拍動分上昇の後すぐ正常に戻るが、
CVPが4cm以上上昇し、10秒間その上昇が続けば陽性と判断する。

良く言うHepatojugular-refluxであるが、肝臓の上でなくても腹部であればどこでも
この徴候を誘導しうる事が確認されている。

このテストの陽性は左房圧上昇( ≧15mmHg, LR = 8.0)を示す徴候である。

○ 頚静脈には頚静脈波の診察もあるが、これについては長くなるので後日。

参考資料:ベイツ診察法 (第9版)、マクギーの身体診断学 (初版)

■ ついでに

この項目について調べているついでに見つけたもの……

収縮期 ⇒ systole → シストリー
拡張期 ⇒ diastole → ダイアストリー
asystole → エイシストリー

と発音すると……。
ずっとシストール、ダイアストールだと思ってた。

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