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2013年12月 3日 (火)

成人がん患者へのインフルエンザワクチン (Cancer 2013; 119; 4028-4035)

イスラエルの単施設で行われた、成人がん患者へのインフルエンザワクチン接種の臨床的意義についての論文。
1シーズンでインフルエンザワクチン有り無し群に分けて、outcomeを追った前向きコホート研究。

結果的にはPrimary outcomeには発熱または呼吸器症状による入院 and/or 肺炎発症 and/or 抗菌薬投与 and/or 呼吸器感染による化学療法の中断を。
Secondary outcomeにはインフルエンザ様症状(咳や咽頭痛、37.8℃以上の発熱、悪寒、インフルエンザ検査陽性)を設定。

結果上記のいずれも接種群に統計学的有意に良好な結果では無く、唯一死亡率だけが有意に少なかったという結果であった。

元々のoutcomeではないmotalityで有意に良好な結果で、その原因についてはインフルエンザピーク時(12月~2月)の
入院率や抗菌薬投与、入院期間が長かった事などを理由にあげているが、ちょっと説得力がない。
結果的にはFluワクチンは有効だという結論で締めていたが、motalityについて議論するなら死因まできちんと議論して欲しかったと思う。

まあ、私の勝手な推測ではおそらくワクチン自体は効果があるのだろうと思うんだけど。

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それよりこの論文を読んで勉強になったのがPropensity scoreというものだ。
今までいかに論文を読んでいないかがバレるので恥ずかしいが、これについては初めて知った。
コホート研究で使われる手法で、患者の背景の差をPropensity(傾向) scoreという値に置き換えて、背景因子を揃えて解析する方法らしい。

例えばこの研究で言うと、元気ながん患者と死にそうながん患者を比べた場合、ワクチンを投与する傾向(propensity)は元気ながん患者の方がもちろん高いわけだ。
つまり元気ながん患者はPropensity scoreが高く、死にそうながん患者はそれが低いということになる。
この背景の違う2群を直接比較するとワクチン接種群で予後が良いという結果になるが、それはただ背景の差を見ただけで何の意味も無い。
この背景を出来るだけ均一にするために、両群で同程度のpropensity scoreを持つ(Matchした)患者同士を比較すれば、背景因子を揃えてワクチンの効果を比較できる。

このように幾つかの背景因子に対してpropensity scoreを設定し、それがmatchした者同士で比較を行うのがpropensity matched analysisということらしい。
多変量解析との使い分けはどのようにしているんだろうと考えてネットを調べてみたら、
イベント発生数(outcome)が変数(この論文の場合、患者の元気度とか、去年のワクチン接種とか)の8倍以上の場合、多変量解析が良いとのこと。(Dr.浦島の学術記事を参照のこと)

内容自体のimpactはそれほど無いが、論文をきちんと読むって大事だなあと感じた一本であった。

Propensity scoreについては、あちらこちらこちらなど。それにこちらこちらなどが詳しい。

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投稿: Kimberly | 2013年12月28日 (土) 23時28分

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